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漢方あらかると

漢方あらかると

患者さんの自覚症状を重視し、患者さん一人一人に合った治療を、数千年の歴史から培われた自然生薬を駆使して行うのが漢方医学です。生薬を使用したからといって漢方というわけではありません。このコーナーは、漢方を正しく、より身近に感じていただけるようなコラムを随時掲載してまいります。

『同病異治、異病同治』

はじめに、同病異治(どうびょういち)、異病同治(いびょうどうち)という言葉をご存じでしょうか?
漢方治療の特徴を示すときによくみられる表現ですが、意味はといいますと、同じ診断名でも人により違う薬が処方されることや、異なった診断名に対して同じ薬が処方されることを示します。
ふつう一般(西洋)の医学においては、診断名と、その治療薬は、種類など多少の差はあるにせよ、ほぼ同様の薬が処方されます。例えば、高血圧には高血圧の薬が、胃潰瘍には胃潰瘍のものと決まった薬があるからです。
一方、漢方では、たとえ風邪でも、患者さんの体格や体力また、時期などにより、有名な葛根湯だけでなく、麻黄湯や小柴胡湯、五苓散等々いろいろな処方が使用され、むしろ葛根湯の使用頻度は少ないくらいです。一方、葛根湯は、体力のある人の結膜炎中耳炎、副鼻腔炎、肩こり顔面神経麻痺など風邪以外でも上半身の炎症に頻用されます。これは漢方の診断学が西洋医学とは異なり、臓器別に疾患を縦割りにしているのではなく、その患者さんを個人単位、人間単位で診るからです。
漢方ではひとつの処方がいろいろな疾患に使用されるのというわけです。
よく患者さんから、“この漢方は何の薬?”と聞かれ、上記の理由から一言で答えられないことが時々あるのです。

『女性における漢方治療』

漢方の古典的教科書のなかに、“女性の病は男性に比べて十倍治しにくい”という記載があります。確かに女性には月経、妊娠、出産、閉経など男性にない生理的な事柄がいくつも存在します。これらはごく日常的な“冷え”、“むくみ”、“めまい”、“不眠”、“不安”、“イライラ感”、“肩こり”等と関連することも多く、漢方では“血の道”とよぶことがあります。
西洋医学に更年期障害という概念はあっても、“血の道”という疾患概念はなく、漢方では“血の道”の処方がいくつもあり、患者さん個人の体力等で使い分けをします。
そして、治療をしていく途中で、ご本人はまるで関係ないと思っていたさまざまな症状、例えば皮膚症状や関節症状等、また、食欲、便秘などの日常的な症状の改善をみることがよくあります。
そんな時、女性の生理機構の複雑さと幾千年も前にその関係を見いだした先人たちの知恵に深い感銘を覚えるものです。

『胃腸症状と漢方』

NUDという言葉を耳にしたことがありますか?
これは胃カメラやバリウム検査で異常がないのに口に酸が上がってきたり、胸焼けやげっぷが多かったり、また、胃部の膨満(ぼうまん)感や食欲不振、胃痛といった自覚症状が現れることをいいます。
普通の胃潰瘍や十二指腸潰瘍とは異なり、見た目に潰瘍性の変化が無いためNon‐Ulcer Dyspepsia=潰瘍の無い消化障害(明確な日本語訳はまだない)NUDと呼ばれています。難しい言い方をすれば胃腸の機能の低下と考えられていて、胃食道逆流型、運動不全型、潰瘍症状型、非特異型などに分類されますが、半数以上は運動不全型といわれています。実験ではこれらの患者さんは低い胃の内圧で不快感を覚えることが知られています。
六君子湯は胃の機能促進作用が実験でも証明されました。潰瘍や強い炎症には西洋薬は大変有効ですが、こういった症状には六君子湯をはじめとした漢方薬の活躍する場面も多そうです。

『母子同服』

漢方に母子同服(ぼしどうふく)という用語があります。
意味は子供の病気に母親と子供が一緒に薬を飲むことを示します。
子供の夜泣き、癇の虫の治療に抑肝散を母子とも一緒に服用してもらうのが典型例です。
つまり、夜泣き、癇の虫の原因が子供の側だけにあるではなく、母親のぴりぴりと張り詰めた精神状態などが、
最も身近な子供に伝わり、それが子供なりに表現されて起こっているとも考えられ、また、
それが逆に、母親の精神状態にさらに悪影響を及ぼしているかもしれません。
よって、そのどちらも治療しようという考え方です。
人は、人に影響され、また、人に影響を与えるものなのですね。

『すごいぞ五苓散』

五苓散という処方は、個人的にかなり以前からお世話になってきた処方です。何といっても腎虚・水毒の僕はずーと昔から、お腹が弱く、すぐ、腹に来てしますので、子供の頃は、父親から、百草丸をよく飲まされました。確かによく効きますがとても苦-くいやいや内服していました。漢方を勉強し始めてから、五苓散を知り、飲み易く、所持し易いのですぐに飛びつきました。また、腹痛だけでなく、頭痛、めまい、吐き気・嘔吐、乗り物酔い、熱中症にと種々の場面で役に立ち(二日酔いへの悪用!?は禁)、まるで長年の友みたいに感じていました。また、この処方は、内科の医師として使用していた利尿薬とは異なる、利水剤というもので、水が余っているときには水を排出し、足りない時には抑える二面性を持ち、かつそれが西洋医学的にも証明されました。
そんなこんなで、一部の西洋医学の先生方にも使用され始めて、心不全の治療や、はたまた、脳神経外科における慢性硬膜下血腫の手術件数を減らすという暴挙(?)まで示しています。
これらの知見が広がれば更なる活躍の場面が拡大するでしょう。まるで、おらが村のアイドルが都会へ行って大スターになってしまう、そんな印象すら覚えてしまいます。

『そもそも漢方とは?』

漢方は約2000年前、中国を起源とした天然植物、動物、鉱物などを材料とした医学体系であることは多くの方がご存知の事でしょう。でも、漢方医学が現在の一般的な医学(西洋医学)とどこが違うかをご存知の方はごく僅かかもしれませんね。そこで、漢方薬を使いさえすれば漢方医学なのか?との問いでは、答えはNoです。寿司を知らない方が酢飯に刺身を適当に乗っけてアレンジしたからと言ってお寿司とはいえないでしょう。つまり、漢方医学とは漢方の概念で病態を考え、それにより、(漢方薬で)治療し、効果を判定していくのです。よってその概念こそが漢方医学の本質なのです。
いくつもの病院や診療科でMRIなど種々の検査を受け、異常ないと来院される方でも漢方の概念で診察を行うと、異常が見え、そして、その治療により症状が改善したという方もおられます。ただ、あくまで見方が異なり治療が可能となるので、どんな病気でも治るわけではありません。漢方でも無理なものはあります。ただ、お困りの方で、一度試されてみるのはいかがですか。昔から押しても駄目なら引いてみなという言葉もあります。違う概念で病(やまい)と対峙するのも一つかもしれません。